この記事では、そんな不安を少しでも和らげるためのチェックリストをご用意しました。臨終直後から葬儀当日までの時系列に沿った準備の流れ、喪主や参列者など立場別の持ち物、親族として知っておきたい費用やマナーのポイント、そして忘れがちな葬儀後の手続きまで、網羅的に解説します。
落ち着いて大切な方をお見送りするために、ぜひ最後までお役立てください。
時系列:葬儀の準備チェックリスト
大切な方が亡くなられた直後は、深い悲しみと同時に、さまざまな手続きや手配に追われます。混乱を避けるためにも、まずは時系列に沿って「やるべきこと」を整理しましょう。
ここでは「臨終直後」「葬儀社との打ち合わせ」「通夜・告別式まで」の3つのステップに分けて、具体的な準備内容をご紹介します。
1:臨終直後(~24時間以内)の最優先事項
まずは、逝去後すぐに動かなければならない最優先事項です。この段階では、近しい親族と連携を取りながら進めることが重要です。
死亡診断書(死体検案書)の受け取り
病院で亡くなられた場合は医師から「死亡診断書」を、ご自宅や事故などで亡くなられた場合は監察医から「死体検案書」を受け取ります。
この書類は、後の死亡届の提出や火葬許可証の申請に必須となる非常に重要なもので紛失しないよう、大切に保管しましょう。通常、7通ほどコピーを取っておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。
近親者への連絡
まずは、ごく近しい親族(配偶者、子、親、兄弟姉妹など)へ訃報を伝えます。深夜や早朝であっても、ためらわずに連絡しましょう。
この時点では、詳細な日程などは決まっていないため、「危篤状態から回復しなかった」「息を引き取った」という事実を簡潔に伝えます。他の関係者への連絡は、日程が決まってから行うのが一般的です。
遺体の安置場所の決定と搬送手配
法律上、死後24時間は火葬することができません。そのため、故人様をご安置する場所を決める必要があります。選択肢は主に「ご自宅」か「斎場・葬儀社の安置施設」です。
ご自宅に安置する場合は、仏壇のある部屋や、ご遺体を安置できるスペースを確保し、布団を準備します。安置場所が決まったら、寝台車で搬送してもらうために、速やかに葬儀社へ連絡を入れましょう。
もし、生前に決めていた葬儀社がない場合は、この時点でいくつかの葬儀社に連絡を取り、搬送だけでも依頼できるか確認します。病院によっては提携している葬儀社を紹介してくれますが、必ずしもそこに依頼する必要はありません。
落ち着いて比較検討する時間がない場合でも、まずは搬送を依頼し、その後の打ち合わせで正式に依頼するかどうかを決めることができます。
菩提寺・宗教者への連絡
菩提寺(先祖代々のお墓があるお寺)がある場合は、この段階で連絡を入れ、故人が亡くなったことを報告します。僧侶の都合を確認しながら、通夜や葬儀の日程を調整する必要があるため、できるだけ早い段階での連絡が望ましいです。
特に、お付き合いのあるお寺がない場合や、特定の宗派にこだわらない場合は、葬儀社に相談すれば、僧侶の手配を依頼することも可能です。
2:葬儀社との打ち合わせで決めることリスト
ご遺体の安置が完了したら、次は葬儀社と具体的な打ち合わせを行います。ここで決める内容が、葬儀全体の骨格となります。親族間で意見が分かれないよう、事前に相談しておくことも大切です。
喪主の決定
喪主は、葬儀の最高責任者であり、遺族の代表者です。一般的には、故人の配偶者や長男・長女が務めることが多いですが、法的な決まりはありません。
故人との関係性や地域の慣習などを考慮し、遺族間で話し合って決定します。喪主は、葬儀社との打ち合わせの中心となり、さまざまな最終決定を下す役割を担います。
葬儀の日程と場所の決定
どのような形式で葬儀を行うかを決めます。
• 一般葬: 家族や親族だけでなく、友人・知人、会社関係者など、広く弔問客を招く形式
• 家族葬: 家族やごく近しい親族、親しい友人など、少人数で執り行う形式
• 一日葬: 通夜を行わず、告別式と火葬を1日で行う形式
• 直葬(火葬式): 通夜や告別式を行わず、火葬のみを行う最もシンプルな形式
故人の遺志や、遺族の意向、予算などを考慮して、最適な形式を選びましょう。
葬儀費用の見積もり確認
葬儀社から詳細な見積もりを出してもらい、内容をしっかりと確認します。見積もりには、祭壇、棺、霊柩車などの「葬儀一式費用」、飲食代や返礼品などの「接待費用」、お布施などの「宗教者への御礼」などが含まれます。
不明な点や、不要だと思われる項目があれば、遠慮なく質問し、納得した上で契約しましょう。複数の葬儀社から見積もりを取る「相見積もり」も有効です。
遺影写真の準備
祭壇に飾る遺影写真を選びます。スナップ写真などからでも、専門の技術できれいに引き伸ばしてくれます。故人らしさが表れている、ピントが合っている写真を選びましょう。
親族で相談しながら、一番よい表情の写真を選ぶとよいでしょう。データで持っている場合は、すぐに葬儀社に渡せるよう準備しておきます。
3:通夜・告別式までに親族で分担する準備
打ち合わせが終わった後も、やるべきことはたくさんあります。喪主一人に負担が集中しないよう、親族間で役割を分担して進めるのが成功の鍵です。
関係者への訃報連絡
葬儀の日程と場所が確定したら、親族、友人、会社関係者、ご近所の方々などへ訃報を連絡します。誰にどこまで連絡するか、連絡先のリストを作成して手分けして行うとスムーズです。
電話が基本ですが、親しい間柄であればメールやSNSで連絡することもあります。連絡の際には、通夜・告別式の日時と場所、喪主の名前、葬儀の形式(特に家族葬の場合)を正確に伝えましょう。
役所への手続き(死亡届・火葬許可証)
「死亡診断書(死体検案書)」の左半分に必要事項を記入した「死亡届」を、亡くなられた方の本籍地、死亡地、または届出人の所在地の市区町村役場に提出します。
この手続きは、法律で死亡の事実を知った日から7日以内と定められています。死亡届が受理されると、「火葬許可証」が交付されます。この一連の手続きは、多くの場合、葬儀社が代行してくれますので、打ち合わせの際に確認しましょう。
弔辞・受付・会計などの役割分担
• 弔辞の依頼: 故人と特に親しかった友人や恩師などに弔辞をお願いする場合は、早めに依頼します。
• 受付係: 弔問客の対応、香典の受け取り、芳名帳への記入をお願いする係です。信頼できる親族や親しい友人に2~3名依頼するのが一般的です。
• 会計係: 受け取った香典を管理・計算する係です。金銭を扱うため、信頼できる身内にお願いするのが良いでしょう。
• 接待係: 弔問客や僧侶にお茶を出すなど、おもてなしを担当します。
供花・供物の手配と確認
親族や会社からいただく供花や供物の取りまとめや、こちらから手配する際の発注を行います。誰から頂いたかを正確に記録し、配置の順番なども葬儀社と相談して決めます。
遠方からの親族のための宿泊手配
遠方から駆けつける親族がいる場合は、必要に応じて宿泊先の手配をします。斎場によっては宿泊施設が併設されている場合もあります。
【立場別】慌てないための葬儀の持ち物リスト

葬儀の準備というと、手続きや手配にばかり目が行きがちですが、「持ち物」の準備も非常に重要です。ここでは、「喪主・親族」と「一般参列者」の立場に分け、さらに男性・女性別の注意点も交えながら、必要な持ち物をご紹介します。
喪主・親族が準備すべき特別な持ち物
喪主や遺族は、一般参列者の持ち物に加えて、葬儀を主催する側として必要なものがいくつかあります。
葬儀費用・宗教者への御礼(お布施など)
印鑑(シャチハタ不可)
挨拶状の文面
親族・関係者の連絡先リスト
筆記用具・メモ帳
着替えや宿泊用品
一般参列者のための持ち物リスト【男性・女性別】
一般参列者として葬儀に伺う際の基本的な持ち物と、男性・女性それぞれの服装や持ち物のマナーについて解説します。
【男女共通の必須持ち物】
香典
数珠(じゅず)
袱紗(ふくさ)
ハンカチ
スマートフォン・携帯電話
【男性参列者の持ち物と服装の注意点】
服装
• スーツ: 光沢のない黒のフォーマルスーツ(ブラックスーツ)。
• ワイシャツ: 白無地のレギュラーカラー。
• ネクタイ: 光沢のない黒無地。
• 靴下: 黒無地。
• 靴: 黒の革靴で飾りのないシンプルなもの。
持ち物と身だしなみ
• 鞄: 基本的に持たないか、黒無地の小さなクラッチバッグ。
• アクセサリー: 結婚指輪以外は外す。
• 時計: シンプルなアナログ時計。
• 髪型: 清潔感を第一に整える。
【女性参列者の持ち物と服装の注意点】
服装
• ウェア: 光沢のない黒のブラックフォーマル。
• ストッキング: 黒の薄手のもの。
• 靴: 黒の布製または革製のシンプルなパンプス。
持ち物と身だしなみ
• バッグ: 黒の布製で飾りのない小ぶりのもの。
• アクセサリー: 一連のパールか結婚指輪のみ。
• 髪型: 長い髪は低い位置でまとめる。
• ネイル: 派手なものは落とすのがマナー。
あると便利な持ち物【親族・参列者共通】
必須ではありませんが、持っていると何かと便利なアイテムです。
予備のマスク
モバイルバッテリー
エチケット用のミントタブレット
常備薬(頭痛薬や胃薬など)
季節に応じたもの(冬場はカイロ、夏場は扇子や制汗シートなど)
小さなビニール袋(ゴミを入れるなど多用途に使えます)
親族として知っておきたい葬儀準備のポイント
親族として葬儀に関わる場合、一般の参列者とは異なる視点での準備や配慮が求められます。ここでは、特に重要なポイントを3つご紹介します。
葬儀費用の分担はどうする?
葬儀費用は、喪主が全額負担する場合もあれば、故人の遺産から支払ったり、兄弟姉妹など親族間で分担したりするケースもあります。この問題は後々トラブルの原因になりやすいため、葬儀の打ち合わせの段階で、親族間でしっかりと話し合っておくことが非常に重要です。
親族ならではの服装マナー
喪主や三親等以内の親族は、一般参列者よりも格上の「正喪服」または「準喪服」を着用するのが正式なマナーです。現在では準喪服が一般的ですが、親戚間で格がちぐはぐにならないよう、事前にどのような服装にするか相談しておくと良いでしょう。
弔問客への心遣いと対応
遺族・親族は、弔問に訪れてくださった方々へ感謝の気持ちを伝える役割も担います。お悔やみの言葉をかけられた際には、「本日はお忙しい中、ご足労いただきまして誠にありがとうございます」と、丁寧にお礼を述べましょう。
葬儀後の手続きも忘れずに!準備リスト
葬儀が終わると心身ともに疲れが出ますが、実はその後の手続きも非常に重要です。忘れてしまうと後々大変になるものも多いため、あらかじめリストで確認しておきましょう。
葬儀後すぐに行う手続き
挨拶回り(僧侶、お世話になった方、近所など)
葬儀費用の支払い
各種名義変更(世帯主変更、電気・ガス・水道・電話など)
故人の年金受給停止手続き• 遺族年金・未支給年金の請求手続き
健康保険・介護保険の資格喪失手続き
香典返しの手配(四十九日法要に合わせて送ることが多い)
生命保険金の請求
少し期間を置いて行う、期限のある重要な手続き
相続放棄・限定承認の申し立て(相続開始を知った日から3ヶ月以内)
故人の所得税の準確定申告・納税(相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内)
相続税の申告・納税(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)
遺言書の有無の確認と、あれば家庭裁判所での検認手続き
遺産分割協議と協議書の作成
不動産や預貯金、自動車などの名義変更(相続手続き)
まとめ
葬儀の準備は、精神的にも肉体的にも大きな負担がかかります。しかし、こうして一つひとつやるべきことをリストで可視化することで、少しは冷静に、計画的に進めることができるはずです。
今回ご紹介したリストは、あくまで一般的な流れです。地域の慣習やご家庭の事情によって異なる場合もありますので、困ったときや迷ったときは、一人で抱え込まずに、周りの親族や経験者に相談したり、葬儀社の担当者を頼ったりしてください。彼らは、数多くの葬儀をサポートしてきたプロフェッショナルです。
何よりも大切なのは、故人様を心から偲び、穏やかな気持ちでお見送りすることです。そのための時間をしっかりと確保するためにも、この準備リストが、あなたの助けとなることを心から願っています。