一般葬では親族や知人が担当するのが一般的ですが、家族葬では葬儀社のサポートを受けながら簡易的に行うこともあります。
本記事では、葬儀受付の基本、孫や嫁が担当する際のポイント、親族間での役割分担、葬儀社との連携方法まで詳しく解説します。
葬儀の受付の役割と重要性
葬儀の受付は、会葬者と遺族を最初につなぐ窓口です。式場に到着した参列者が最初に訪れる場所であり、その対応によって葬儀全体の印象が大きく左右されます。
葬儀は限られた時間の中で多くの人が訪れるため、受付が的確に機能しなければ、会場の混乱や進行の遅れにつながりかねません。
受付は香典の受け取りや弔電の取り次ぎ、芳名帳への記入案内、返礼品や会葬礼状の手渡しなどを担い、式全体をスムーズに進めるための重要な役割を果たします。
葬儀に不慣れな参列者にとっては、受付での丁寧な案内が安心感につながります。遺族側から見ても、受付がしっかりと対応してくれることで心の負担が軽減され、故人との別れに集中できるという大きなメリットがあります。
受付業務の目的と位置づけ
受付業務の目的は、会葬者を円滑に式へと導き、香典や弔意の品の受け取りを確実に行うことです。葬儀の進行を妨げないよう、入口での案内や誘導を迅速かつ丁寧に行い、会場内の厳粛な雰囲気を保ちます。
また、香典や弔電など金銭や貴重品を扱う場面が多く、正確さと慎重さが求められます。受付は単なる事務作業ではなく、「遺族を代表して参列者を迎える立場」としての意味合いも強く、遺族の感謝や礼節を最初に伝える重要な場です。
そのため、受付担当者は葬儀全体の第一印象を左右する存在であることを自覚する必要があります。
香典や記帳の対応などの仕事内容
受付の主な仕事内容は次の通りです。
- 来場者への挨拶と一礼
- 芳名帳または芳名カードの記入案内(書き方に迷う方へのサポート)
- 香典の受け取りと整理(表書きが上になるよう両手で受け、盆・トレイで管理)
- 会葬礼状・返礼品の手渡しと動線に配慮した案内
- 弔電・供物の受け取りと葬儀社スタッフへの速やかな引き継ぎ
香典は受付台に直接置かず、専用の盆やトレイに載せて扱います。芳名帳の記入に迷っている参列者には、静かに要点を示して案内します。
返礼品や礼状は会場の混雑を避ける配置で手渡し、次の動線を明確に示します。複数名で担当する場合は、役割分担を事前に決め、合図や声かけのルールを共有しておくと滞りなく進行できます。
受付担当者に求められるマナーと心構え
受付担当者は葬儀の「顔」として、立ち居振る舞いと服装に細心の注意を払います。服装は喪服または黒を基調とした控えめな礼装とし、派手なアクセサリーや明るい色の小物は避けます。化粧は控えめに整え、香水は使用を控えるのが望ましいでしょう。
言葉遣いは丁寧語を基本とし、「いらっしゃいませ」ではなく「本日はご会葬いただきありがとうございます」など、弔事にふさわしい挨拶を使います。
動作は落ち着きと丁寧さを意識し、笑顔は控えめながらも柔らかい印象を保ちます。高齢の参列者や遠方からの来訪者には椅子や荷物置き場の案内を行うなど、状況に応じた配慮が大切です。
心構えとしては、遺族の代理として故人への敬意と参列者への感謝を忘れず、式の進行を陰から支える意識を持つことが重要です。
万一の不足物やトラブルが発生した際は、独断で判断せず、すぐに葬儀社スタッフや責任者に連絡して連携を取る—この基本を徹底することで、受付は式全体の安心と秩序を支える要となります。
葬儀受付は誰がやるべき?判断基準と基本ルール

葬儀の受付を誰に依頼するかは、式の規模や参列者の顔ぶれ、遺族の状況によって変わります。一般的には、喪主や遺族が直接受付に立つことは避け、親族や信頼できる知人に依頼します。これは受付が単なる作業ではなく、香典や記帳の対応、参列者への案内など多くの業務を伴い、葬儀全体の印象にも関わるためです。
判断の基本は次の三点です。これに沿って依頼先を選ぶと、当日の混乱を防げます。
葬儀進行の妨げにならないこと
会葬者が安心して対応を受けられること
金銭や貴重品の取り扱いを任せられる信頼性があること
喪主や遺族が直接受付をしない理由
喪主や近親の遺族は、弔問客への挨拶や式進行への参加、僧侶・司会者との打ち合わせなど、多くの重要な役割があります。受付業務に立つと、これら本来の役割に支障が出る可能性があります。
また、受付では会葬者と短時間ながら会話を交わすため、感情がこみ上げて対応が難しくなる場面もあります。
特に喪主や配偶者、子どもなど故人との関係が深い立場では心情面の負担が大きく、丁寧で落ち着いた応対を維持するのが難しくなりがちです。こうした理由から、遺族は受付に立たず、信頼できる人に任せるのが一般的です。
親族・友人・近隣など依頼先の優先順位
第一候補は、喪主や遺族以外の親族です。兄弟姉妹や甥姪、従兄弟など、故人や遺族との関係が比較的近く、かつ式の進行に直接関わらない立場の親族が適任です。
親族で人員が足りない場合は、故人や遺族と親しい友人や知人にお願いすることも検討します。地域によっては、近隣住民や町内会の役員が受付を手伝う慣習が残っている場合もあります。
依頼先を選ぶ際には、会葬者の顔をある程度知っている人や、落ち着いた対応ができる人を優先するとスムーズです。
受付は2名以上で行うのが望ましく、役割分担を明確にして手戻りを防ぎます。例えば、次のような分担が有効です。
- 香典の受け取り・管理
- 記帳案内・動線誘導
- 返礼品・会葬礼状の手渡し
当日の開始前に、合図や声かけのルール、引き継ぎ方法を共有しておくと、混雑時の対応力が高まります。
葬儀社スタッフがサポートできる範囲
近年は、葬儀社が受付業務を補助または一部代行するケースも増えています。葬儀社スタッフは、受付台の設置、芳名帳や芳名カードの準備、香典受け取り用の盆や袋の手配、返礼品の配置など、物理的な準備面で大きく支援します。
また、参列者の誘導や動線整理、受付後の香典や弔電の保管・整理など、専門知識を活かしたサポートも可能です。
- 受付備品(芳名帳・筆記具・トレイ等)の準備・配置
- 参列者の誘導、会場内外の動線整理
- 香典・弔電の一時保管と遺族側への引き継ぎ補助
ただし、香典の受け取りや金銭の直接管理は、原則として遺族側または依頼を受けた信頼できる人が行うのが基本です。
葬儀社スタッフの役割はあくまで補助的なものであり、責任の所在を事前に明確にしておくことが、トラブル防止につながります。
孫が葬儀受付を担当する場合のポイント
葬儀の受付は参列者と遺族をつなぐ外向きの役割で、香典・記帳対応や案内、動線整理など多岐にわたります。
孫が担当するのは、親族内の人員が不足している場合や、孫が成人しており社会経験がある場合に適しています。孫という近しい立場は参列者に安心感を与え、温かみのある応対につながる一方、感情面の負担も生じやすいため、事前準備が成功の鍵になります。
孫が受付をするメリットと向いているケース
孫が受付を担う利点は、親族としての信頼感と親しみやすさにあります。故人と縁の深い参列者に対しても声をかけやすく、式全体の雰囲気を和らげやすい点が評価されます。
動作や案内のスピードが求められる場面でも、若い世代の柔軟性が活きます。特に次のようなケースに向いています。
- 成人しており、落ち着いた受け答えができる
- 接客・販売などの経験があり、敬語や所作に慣れている
- 故人との関係を踏まえ、会葬者との短い会話を自然に交わせる
- 他の親族が受付に立てない事情がある(進行・読経サポート等)
一方、感情が大きく揺れやすい場合は、最前列の挨拶よりも受付の裏方や補助係に回るなど、負担を調整すると安心です。
年齢や経験による適性
受付は金銭・貴重品(香典・弔電等)の取り扱いと目上の方への応対が伴うため、原則として成人の孫が望ましい立場です。未成年でも不可能ではありませんが、必ずベテランの親族とペアを組み、金銭管理は成人が担当する体制をとります。
接客経験があれば、挨拶の声量や姿勢、受け渡しの手元など、細部の所作に無理が出にくく、混雑時の対応力も高まります。経験が少ない場合は、簡易マニュアルの共有やロールプレイで短時間の練習を行い、記帳案内・返礼手渡し・誘導などの役割を分けて負担を減らすと効果的です。
注意すべきマナーと事前準備
服装は喪服が基本。学生は学校指定の制服、なければ黒系スーツを選びます。光る装飾・派手なメイクやネイル・強い香水は避け、髪型は清潔感を重視します。
言葉遣いは「いらっしゃいませ」ではなく「本日はご会葬いただきありがとうございます」を用い、所作は静かで丁寧に。高齢の参列者には椅子や荷物置き場を案内し、動線を妨げない位置で受け渡しを行います。
- 香典対応:両手で受け取り、表書きが上になる向きで扱い、盆・トレイで管理
- 記帳案内:芳名帳/カードの書き方を簡潔に示し、筆記具の予備を準備
- 返礼手渡し:品名と数量を事前確認。混雑時は列を詰めすぎないよう声かけ
- 引き継ぎ:弔電・供物は受付で滞留させず、葬儀社スタッフへ速やかに連絡
当日までに、役割分担(受け取り・記帳案内・返礼・誘導・バックヤード連絡)の割り振り、合図や声かけのルール、トラブル時の連絡先(責任者・葬儀社担当者)を明確にしておきます。
動揺しやすい場合は、表に立つ人と裏で整理する人を分けるなど、負荷を調整しましょう。これらの準備により、孫ならではの温かさを保ちながら、受付業務を滞りなく遂行できます。
嫁が葬儀受付を担当する場合のポイント

葬儀における受付は、参列者と遺族をつなぐ重要な役割です。嫁が担当する場合は、親族構成や地域の慣習によって背景が異なります。
特に義父母や義祖父母の葬儀では、嫁が家の一員として公式な役割を担うことが多く、参列者からも「遺族の一員」として見られます。
受付は単に香典や記帳を受け付けるだけでなく、葬儀全体の印象を左右する立ち位置です。そのため、嫁が受付を務める際には、葬儀全体の流れや接遇マナーを理解し、立場に応じた振る舞いを心がける必要があります。
嫁が受付を任される場面と背景
嫁が受付を担当するケースは、主に以下のような場面で見られます。
- 親族の人数が限られており、人手が不足している場合
- 義理の親族から信頼され、接遇や会話が得意だと判断された場合
- 喪主や直系遺族が儀式や弔問対応で忙しく、受付に立つ余裕がない場合
- 地域や家の慣習として、嫁が外向きの役割を担うことが一般的な場合
特に義父母や義祖父母の葬儀では、参列者の多くが義理の親族や地域の知人であり、嫁が外部からの来客対応にあたることで遺族側の負担が軽減されます。
義理の関係で配慮すべき点
嫁という立場は血縁ではないため、微妙な距離感があります。このため、義理の関係ならではの配慮が必要です。
参列者との会話では、「家族側の立場として対応する」意識を持ちつつも、過度に親しげになりすぎないようにします。義親族同士の関係や呼称は事前に確認し、名前や続柄を間違えないよう注意します。
服装や所作にも細心の注意を払い、派手な装飾や自己主張の強い振る舞いは避けます。不明点や判断が難しい場面が発生した場合は、必ず義兄弟姉妹や葬儀社スタッフに確認してから対応します。独断で判断することは、後の誤解やトラブルにつながりかねません。
受付以外で嫁が担いやすい役割
葬儀では受付以外にも、嫁が活躍できる場面があります。例えば、控室での参列者対応やお茶出し、返礼品や会葬礼状の補充、参列者の動線案内などは、柔軟に動ける立場の嫁が担当しやすい仕事です。
また、葬儀前後の準備や片付け、香典帳の整理や弔電の仕分けなど、裏方業務でも重要な役割を果たせます。特に会葬者が多い場合や高齢の親族が多い場合には、動きやすく臨機応変に対応できる嫁の存在は大きな支えとなります。
受付とこれらの補助業務を組み合わせることで、葬儀全体の流れが円滑になり、遺族間の負担も分散されます。
家族葬や小規模葬での受付対応
家族葬や小規模葬では、参列者の人数が限られるため、受付の形態も一般葬とは異なります。大規模な受付台や複数人での対応が不要な場合が多く、状況に応じて簡略化や省略も可能です。
ただし、省略する場合でも参列者の確認や香典の受け取り、返礼品の手渡しなどは何らかの形で行う必要があります。受付の形をどうするかは、事前に葬儀社や家族と相談して決めるのが望ましいでしょう。
家族葬で受付を省略するケース
家族葬では参列者が親族やごく親しい友人に限られるため、形式的な受付を設けず、会場入り口で直接案内する形を取ることがあります。この場合、香典は会場内で遺族が直接受け取る、または香典辞退の意向を事前に伝えておくことが多いです。
受付を省略するメリットは、準備や人員の負担が減り、よりアットホームな雰囲気で葬儀を進められる点です。一方で、参列者名簿や香典帳を残さない場合は、後日お礼や挨拶回りが必要な際に不便が生じるため、代替の記録方法を検討すると安心です。
親族内で簡易的に行う方法
簡易的な受付は、親族1〜2名で行うのが一般的です。会場入り口や控室前に小さなテーブルを設け、芳名カードと香典盆を置き、最低限の記帳・受け取りを行います。
この場合、役割は「香典の受け取り」「芳名カードの管理」「返礼品の手渡し」の3つに分けるとスムーズです。親族だけで行う場合は、事前に対応マナーや手順を共有しておくことで、当日の混乱を防げます。
また、参列者が知人ばかりの場合でも、記帳や香典の受け取りは必ず記録として残すようにしましょう。後日のお礼や法要案内が必要になった際に役立ちます。
会葬者が少ない場合の工夫
会葬者が10名未満など非常に少ない場合は、受付業務を式の進行役や親族のサポート業務と兼任することも可能です。例えば、受付を担当しながら控室案内や飲み物の提供を行うなど、柔軟に対応できます。
ただし、兼任する場合は一人で全てを抱え込まず、葬儀社スタッフや他の親族と連携しながら進めることが大切です。また、受付に常時人がいないと参列者が戸惑うため、誰かが必ず会場入口付近に待機する体制を作りましょう。
簡易的な受付でも、服装や所作、言葉遣いといった基本マナーは変わりません。少人数でも丁寧な対応を心がけることで、参列者に感謝の気持ちがしっかり伝わります。
受付担当を決めて依頼する手順
葬儀の受付は、会葬者との最初の接点であり、式全体の進行にも影響する重要な役割です。そのため、担当者は計画的に選び、依頼から当日までの流れを明確にしておく必要があります。
手順は大きく分けて「人選」「打ち合わせ」「事前準備」「当日の引き継ぎ」の4段階です。これらを踏まえて進めることで、当日の混乱や対応漏れを防ぎ、円滑な式進行につながります。
喪主・遺族・葬儀社との打ち合わせ
まず、喪主と遺族、葬儀社担当者で受付の方針や規模を共有します。参列者の人数や香典の有無、返礼品の有無によって、受付の人員数や役割分担が変わるためです。
打ち合わせでは以下の内容を確認します。
- 受付の設置場所と動線
- 人員数(最低2名、混雑が予想される場合は3〜4名)
- 担当者の依頼先(親族、友人、近隣など)
- 香典辞退の有無とその案内方法
- 必要な備品(芳名帳、筆記具、香典盆、返礼品、会葬礼状など)
この段階で、葬儀社がサポートできる範囲も明確にしておくと、後の準備がスムーズになります。
担当者への事前説明と準備物の共有
受付担当者を依頼したら、必ず事前に役割や流れを説明します。葬儀当日に初めて業務内容を伝えると混乱の原因になるため、少なくとも前日までには説明と備品確認を行います。
説明内容の例:
- 香典の受け取り方法(両手で受け、表書きが上になる向きで扱う)
- 芳名帳や芳名カードの記入案内の仕方
- 返礼品や会葬礼状の手渡しタイミング
- 弔電や供物を受け取った際の対応
また、香典や芳名カードの保管場所や、休憩や交代のタイミングも共有しておくと安心です。準備物は香典盆、筆記具予備、メモ用紙、返礼品の在庫確認リストなど、細かい備品も漏れなく揃えます。
当日のスムーズな引き継ぎ方法
当日は、受付開始30分前には担当者が集合し、最終確認を行います。この際、受付台の配置や備品の位置、返礼品の置き場、香典や芳名帳の収納場所を共有しておきます。
式の途中で交代する場合は、香典や記帳簿をそのまま置きっぱなしにせず、きちんと封筒や箱にまとめ、責任者に引き渡してから席を離れます。
まとめ|葬儀の受付は立場と状況で柔軟に判断する
葬儀の受付は、会葬者と遺族をつなぐ大切な役割であり、式全体の印象や進行のスムーズさに直結します。担当者を決める際は、喪主や遺族の負担を減らし、参列者に安心感を与えられる人を選ぶことが重要です。
一般的には、喪主や直系遺族は受付を避け、親族や信頼できる知人、場合によっては葬儀社スタッフのサポートを受けながら進めます。孫や嫁といった立場の人が担当する場合は、その関係性や経験を活かしつつ、事前の準備とマナーの確認が欠かせません。
家族葬や小規模葬では、受付を省略または簡易化する方法もありますが、記帳や香典の管理など最低限の対応は行いましょう。事前の打ち合わせや役割分担、当日の引き継ぎ方法を明確にしておくことで、予期せぬ混乱やトラブルを防げます。
状況に応じた柔軟な判断と準備があれば、葬儀の受付は故人を偲ぶ場を支える大きな力となります。