葬儀に参列できないとき、故人や遺族へお悔やみの気持ちを伝える手段として「弔電」を送る方は多いでしょう。最近では弔電に線香やろうそくが添えられた「線香付き弔電」も見かけますが、「送ると迷惑になるのでは?」と心配する声も少なくありません。
実際、遺族にとってはありがたく受け取られる場合もあれば、宗派や地域の風習、保管の手間などから負担に感じられることもあります。
この記事では、線香付き弔電の基本や迷惑とされるケース、送る際の注意点、そして代替手段までわかりやすく解説します。初めて葬儀を行う方でも安心できるよう、マナーを押さえて失礼のない対応を心がけましょう。
弔電と線香付き弔電の基本知識
葬儀に直接参列できない場合でも、故人や遺族にお悔やみの気持ちを伝える方法として利用されるのが「弔電」です。特に近年は、冠婚葬祭に慣れていない世代にも浸透しており、葬儀の場で広く活用される手段のひとつとなっています。
ここでは、弔電そのものの意味と役割、そして線香付き弔電の特徴や利用される場面について整理していきましょう。
弔電とは?お悔やみの気持ちを伝える方法
弔電とは、葬儀や告別式に参列できない人が、電報サービスを通じて遺族へ哀悼の意を伝えるメッセージのことです。通常、葬儀会場に直接届けられ、司会者や僧侶によって読み上げられる場合もあります。
弔電の役割は大きく分けて二つあります。ひとつは、参列できない立場から故人を偲ぶ気持ちを伝えること。もうひとつは、遺族に「あなたの悲しみに寄り添っています」という意思を示すことです。
現金である香典とは異なり、弔電は形式的にも心情的にも比較的ハードルが低く、多くの人が利用しやすい弔意の表し方と言えるでしょう。
また、弔電には定型文や文例が用意されているため、初めて送る人でも失礼のない文章を選びやすいという利点があります。ただし、宗派によっては「冥福」という言葉が適切でない場合(例:浄土真宗では「冥福を祈る」という表現を用いない)もあり、注意が必要です。
線香付き弔電とはどんなものか
線香付き弔電とは、通常の弔電に加えて、お線香やろうそくといった仏具を同封して遺族に届けるサービスのことを指します。
宅配便と同じ形式で届けられることが多く、弔電を受け取った遺族が自宅や斎場でそのまま使用できるよう配慮されています。
多くの場合、桐箱や紙箱に収められたお線香がセットになっており、弔電文とともに届けられます。価格帯は数千円から一万円程度まで幅広く、選ぶ商品によって「簡素に伝える」「特別な想いを込める」といったニュアンスを持たせることができます。
線香付き弔電は、単なるメッセージに留まらず「形ある供養」を併せて届けることができる点が特徴です。弔電のみでは気持ちが伝わりにくいと感じる人や、遺族に少しでも役立つものを添えたいと考える人が選ぶケースが増えています。
利用される場面や背景
線香付き弔電が利用される場面として多いのは、次のようなケースです。
- 遠方に住んでおり、葬儀に参列できない場合
- 遺族との関係が深く、通常の弔電だけでは気持ちを伝えにくい場合
- 香典や供花の手配が難しく、代わりに気持ちを形にしたい場合
特に近年は核家族化やコロナ禍の影響で「直接会えない弔意表明」の需要が増えたことから、線香付き弔電が注目されるようになりました。
一方で、遺族にとっては「ありがたい」と受け止められる場合もあれば、「保管場所に困る」「宗派に合わない」といった理由で負担になることもあります。
そのため、線香付き弔電は万能ではなく、利用する際には遺族の立場や地域の風習を踏まえた配慮が欠かせません。まずは「弔電」と「線香付き弔電」の違いを理解したうえで、状況に応じて選択することが大切です。
線香付き弔電は迷惑になるのか?

弔電は本来、故人を偲ぶ気持ちや遺族へのお悔やみを言葉で伝えるものです。そこに線香を添えることは一見すると丁寧で心のこもった対応に思えますが、受け取る側にとっては必ずしも歓迎されるとは限りません。
ここでは、線香付き弔電が「迷惑」と捉えられる場合と「ありがたい」と受け止められる場合の両面を整理していきます。
遺族の立場から見た主なデメリット
線香付き弔電が迷惑と感じられる理由の一つは、遺族にとって負担になる可能性があるからです。葬儀の準備や参列者対応で慌ただしい中、弔電に加えて線香やろうそくが届くと、荷物の管理や保管に手間がかかることがあります。
特に会場に届いた場合、段ボール箱や包装紙を処分しなければならず、遺族の負担が増えると感じる人もいます。
また、弔電の本来の役割は「言葉による弔意の伝達」であるため、線香を添えることがかえって過剰と受け止められるケースもあります。「弔電だけで十分」と考える遺族も少なくありません。
保管や持ち帰りの負担
線香自体は消耗品ですが、葬儀当日にはすでに寺院や斎場で十分な数が用意されていることが多く、追加で届いても使いきれないことがあります。
結果として余った線香を遺族が自宅に持ち帰り、長期間保管することになり、収納場所を圧迫することもあります。特に都市部のマンションなど住居スペースが限られている家庭では「かえって迷惑」と思われる要因になりやすいのです。
宗派や地域の風習に合わない場合
宗派によっては線香を用いない、あるいは香りの強いものを避けるなど独自の慣習がある場合があります。たとえば浄土真宗では「焼香は回数や作法に意味を置くものの、線香を贈る」といった文化は強く根付いていません。
また、地域によっては弔電に物を添える習慣がほとんどなく、「常識外れ」と受け止められることもあります。このように宗派や地域性を考慮しないと、善意がかえって失礼になるリスクがあるのです。
「ありがたい」と受け止められるケースもある
一方で、すべての遺族が線香付き弔電を迷惑と感じるわけではありません。中には「心のこもった贈り物」としてありがたく受け止める遺族もいます。特に線香は故人への供養に直接役立つため、「形ある品が届いて助かった」と感じる人もいるのです。
遠方から参列できない親しい友人や恩師が線香付き弔電を送った場合、遺族はその気持ちを強く受け止め、後日感謝を伝えることも少なくありません。
また、弔電だけでは素っ気なく感じると考える人にとって、線香付き弔電は「心遣いの表れ」と映ることもあります。実際、葬儀社や電報サービスでも人気商品として紹介されることが多く、需要は確かに存在します。
線香付き弔電を送るときの注意点
線香付き弔電は、通常の弔電に比べて「物を添える」という点で特別感がありますが、その分だけ配慮すべき点も多くなります。
送る側の善意がかえって遺族に負担をかけてしまうことを避けるためには、いくつかの注意点を押さえておくことが大切です。ここでは、送付前に確認しておきたいポイントを整理しました。
宗派や地域の慣習を確認する
葬儀に関するマナーは、宗派や地域によって大きく異なります。たとえば浄土真宗では「冥福を祈る」という言葉を避けるように、供養に対する考え方そのものが他の宗派と違うことがあります。
線香についても「立てるのか寝かせるのか」「香り付きは避けるのか」など細かい違いがあり、宗派によっては線香の贈答が適切でない場合もあるのです。
また、地域によっては弔電に品物を添える習慣がほとんどなく、かえって「場違い」と受け止められる可能性もあります。送付前に、相手の宗派や地域のしきたりをできる範囲で調べておくことが重要です。
故人や遺族との関係性を考慮する
線香付き弔電は「通常の弔電以上の心遣い」として受け取られることが多いため、送る側の立場や関係性を意識する必要があります。
たとえば、親族や生前に深い交流があった人が送る場合には「気持ちがこもっている」と喜ばれる可能性が高いですが、仕事上のつきあい程度の関係で送ると「重すぎる」と感じられることもあります。
遺族にとって自然に受け入れられるかどうかを考え、「香典や供花で十分か」「通常の弔電のほうがふさわしいか」を判断しましょう。
宅配で届く場合の受け取り配慮
線香付き弔電は宅配便の形式で届くことが多く、遺族が直接受け取る必要があります。葬儀の前後は忙しく、在宅していないことも多いため、不在票対応や再配達が負担になることもあります。
また、式場に送る場合には「式の前日までに到着するよう手配する」「時間指定ができるサービスを利用する」といった工夫が必要です。さらに、葬儀社や斎場が受け取りに対応してくれるかどうかも事前に確認しておくと安心です。
迷うときは通常の弔電を選ぶ
どうしても「線香付きにすべきか迷う」と感じる場合は、無理をせず通常の弔電を選ぶことをおすすめします。弔電の本来の役割はあくまで「言葉による弔意の表明」であり、遺族にとって最も大切なのは心のこもった言葉です。
特に宗派や地域、関係性が複雑で判断が難しい場合、余計な負担を避ける意味でもシンプルな弔電のほうが無難です。形式にこだわるよりも、遺族の立場に立った気配りを優先することが、結果的にマナーにかなった行動となります。
線香付き弔電の代替手段
線香付き弔電は心のこもった方法のひとつですが、必ずしもすべての場面で最適とは限りません。相手の宗派や地域性、また遺族の負担を考えると、線香を添えずに他の方法で弔意を伝えるほうが望ましいケースも多くあります。
ここでは、線香付き弔電の代わりに選べる代表的な方法を紹介します。
通常の弔電で心を伝える
もっとも基本的で安心できるのは、やはり通常の弔電です。弔電の本質は「言葉で哀悼の意を伝える」ことであり、品物を添えなくても遺族には十分に気持ちが届きます。
特に葬儀の場では、弔電は司会者が読み上げることも多く、弔意の言葉そのものが参列者全体に伝わるため、形式としても十分です。文例集や定型文を利用すれば失礼のない文章を作成できるので、初めて送る人でも安心です。
供花や供物を手配する
弔意をより形に表したい場合は、供花や供物を選ぶ方法があります。花は会場を明るくし、故人を偲ぶ気持ちを表現するものとして広く受け入れられています。
また、果物や盛籠などの供物も「故人への捧げもの」として意味を持ち、遺族から喜ばれることが多いです。
ただし、供花や供物も斎場の規定や宗派によって受け付けない場合があります。手配する際は、必ず葬儀社や遺族に確認をとってから準備することが大切です。
香典や後日の弔問で伝える方法
線香付き弔電の代わりに、香典を送るという方法もあります。金銭を直接送ることに抵抗がある人もいますが、遺族にとっては実際の負担軽減につながるため、現実的でありがたい支援となります。
また、葬儀に参列できなかった場合には、後日あらためて弔問することも一つの方法です。短時間でも訪問し、手を合わせる機会を持つことで、遺族に「本当に気にかけてくれている」という気持ちが伝わります。
まとめ
線香付き弔電は、通常の弔電に比べてより丁寧に気持ちを伝えられる一方で、遺族の立場によっては「ありがたい」と感じられる場合もあれば「保管や管理に負担がかかる」「宗派や地域の習慣に合わない」と受け止められることもあります。
大切なのは、自分の気持ちをどう表すかではなく、遺族にとってどのように受け取られるかという視点です。宗派や地域の違い、故人や遺族との関係性をよく考えた上で、線香付き弔電を選ぶのか、あるいは通常の弔電や供花・香典といった代替手段を選ぶのかを判断すると安心です。
迷った場合には、無理に線香を添える必要はなく、心のこもった言葉を綴った通常の弔電でも十分に弔意は伝わります。弔電の本質は「故人を偲び、遺族を思いやる心」にあります。その気持ちを適切な形で表すことこそ、もっとも大切なマナーと言えるでしょう。