この記事では、そんなお悩みを解決するため、国内での車や飛行機を使った搬送方法の違いから、それぞれの料金体系、そして費用を賢く抑えるポイントまで詳しく解説します。
さらに、海外からの搬送における複雑な手続きや流れについても分かりやすくご紹介しますので、故人様を安らかにお迎えするための準備として、ぜひ最後までお役立てください。
遺体搬送の基本を理解する
一般的に、ご逝去からご葬儀までの間には、複数回の搬送が必要となります。
お迎え搬送:病院や警察署など、お亡くなりになった場所から、ご遺体を安置する場所(ご自宅や斎場の安置施設など)までお連れする搬送
安置場所から式場への搬送:ご自宅などで安置した後、お通夜や告別式を行う葬儀式場へご遺体を移動させる搬送
出棺:葬儀式場から火葬場へ向かう最後の搬送
県外・長距離の遺体搬送、車と飛行機の違い
旅行先や単身赴任先など、国内の遠方で亡くなられた場合のご遺体搬送について、具体的な方法や費用、流れを見ていきましょう。
県外への長距離搬送で主に利用される手段は、「寝台車(自動車)」と「飛行機」の2つです。どちらを選ぶかは、距離や費用、ご遺族の希望によって決まります。
1. 寝台車(自動車)での搬送
ご遺体を搬送するために特殊な設備を備えた車両です。一般的に、葬儀社や遺体搬送専門業者が手配します。
寝台車を利用する最大のメリットは、お亡くなりになった場所からご安置される場所まで、乗り換えの必要なく直接お連れできる点にあります。いわゆるドアツードアでの搬送が可能なため、飛行機に比べて手続きがシンプルで、ご遺族の精神的な負担も軽減されるでしょう。
また、事前に確認は必要ですが、車両によってはご家族が同乗することもでき、故人様と離れることなく移動できるという安心感も得られます。
その一方で、デメリットも考慮しなければなりません。陸路での移動となるため、距離が長くなるほど時間と費用が比例して増加してしまいます。交通渋滞など予期せぬ事態によって到着が遅れる可能性もゼロではありません。
加えて、長時間の移動はご遺体の状態にも関わるため、ドライアイスの追加など、ご遺体を良好に保つためのより一層の配慮が不可欠となります。
搬送距離が概ね500km~600km程度までであれば、寝台車での搬送が一般的です。費用や時間の面で、飛行機よりもメリットが大きくなることが多いでしょう。
2. 飛行機(国内線)での搬送
長距離の移動時間を大幅に短縮できるのが飛行機による搬送です。ただし、ご遺体は「貨物」として扱われるため、手続きや費用体系が特殊になります。
飛行機を利用する最大のメリットは、その圧倒的な速さにあります。長距離であっても短時間で移動できるため、ご遺族が故郷で待つ時間を大きく短縮できます。また、車両での陸送に比べて揺れが少ないため、ご遺体への負担を抑えられるという利点もあります。
特に本州の端から端へといった極端な長距離の場合、結果的に寝台車よりも総費用が安くなることがあるのも見逃せないポイントです。
しかしその一方で、飛行機ならではのデメリットも理解しておく必要があります。まず、お亡くなりになった場所から出発空港まで、そして到着空港からご安置場所まで、それぞれ寝台車を別途手配しなければなりません。
さらに、航空会社の規定に沿った複雑な手続きや、空輸に適した棺の準備も必須となります。天候によっては欠航や遅延のリスクが常につきまとう点も注意が必要です。
そして何より、ご家族は同じ便に搭乗できても、故人様は貨物室でお休みになるため、移動の間は離れ離れになってしまうという寂しさがあります。
県外・長距離搬送の料金体系
ご遺族にとって最も気になるのが費用でしょう。長距離搬送の費用は、決して安価ではありません。ここでは、その料金体系と相場を解説します。
寝台車の場合の費用計算方法
寝台車の料金は、主に以下の要素を組み合わせて算出されます。
• 基本料金:10km~20kmまでの搬送料金。業者により異なりますが、15,000円~25,000円程度が相場です。
• 距離加算料金:基本距離を超えた分について、走行距離に応じて加算されます。10kmごとに3,000円~5,000円程度が目安です。長距離の場合は割引が適用されることもあります。
付帯料金
• ドライアイス・処置料:長距離搬送ではご遺体の保全が不可欠です。1日あたり10,000円~20,000円程度かかります。
• 高速道路料金・フェリー代:実費で請求されます。• 深夜・早朝割増:夜間(22時~5時など)の搬送には、2~3割の割増料金がかかるのが一般的です。
• 人件費(運転手2名体制など):長距離運転の場合、安全のために運転手が2名体制になることがあり、その分の人件費が加算されます。
<費用シミュレーション(あくまで目安)>
• 東京 → 大阪(約500km):15万円~25万円程度
• 東京 → 福岡(約1,100km):25万円~40万円程度
飛行機の場合の費用内訳
飛行機での搬送費用は、複数の費用の合計となります。
• 航空運賃:ご遺体は「貨物」として扱われ、その運賃は重量で決まります。棺や保冷剤などを含めると、およそ100kg前後になることが多く、その重量で計算されます。区間によりますが、5万円~15万円程度が目安です。
• 搬送料金(寝台車):お亡くなりになった場所から出発空港までと、到着空港から安置場所までの2回分の寝台車費用が必要です。それぞれ2万円~5万円程度かかります。
• 棺の費用:航空輸送に適した頑丈な棺(空輸棺)が必要になる場合があります。通常の棺よりも高価になることがあります。
• 空港での手続き費用・人件費:航空会社との調整や貨物カウンターでの手続きにかかる費用です。
<費用シミュレーション(あくまで目安)>
•東京 → 福岡:合計で25万円~40万円程度
• 東京 → 沖縄(那覇):合計で30万円~50万円程度
寝台車と飛行機の費用は、距離によって逆転することがあります。必ず複数の業者から見積もりを取り、総額で比較検討するようにしましょう。
費用を抑えるための3つのポイント
高額になりがちな長距離搬送の費用を、少しでも抑えるためのポイントをご紹介します。
1. 複数の業者から見積もりを取る
これは最も重要なポイントです。業者によって料金体系は大きく異なります。必ず2~3社から相見積もりを取り、料金だけでなく、対応の丁寧さやサービス内容を比較検討しましょう。
2. 葬儀とセットで依頼する
搬送後の葬儀も同じ葬儀社に依頼することで、「搬送料金割引」などのサービスを受けられる場合があります。トータルで考えると費用を抑えられる可能性が高いです。
3. 搬送専門業者を検討する
葬儀は行わず、搬送だけを専門に扱っている業者も存在します。葬儀社を介さない分、費用が安くなるケースがありますが、その後の葬儀や安置場所は自分で手配する必要があります。
死亡診断書(死体検案書)の携帯義務:絶対に紛失しないよう、責任者がしっかりと管理しましょう。
ご遺体の保全(エンバーミングの検討):移動に時間がかかる場合や、夏場など気温が高い時期は、ご遺体の状態を美しく保つために「エンバーミング」という防腐・殺菌処置を検討するのも一つの方法です。費用は15万円~25万円程度かかりますが、数日間はドライアイスなしで安置が可能になり、お顔も安らかな状態が保たれます。
搬送先の受け入れ準備:ご自宅に搬送する場合は、ご遺体を安置するスペース(布団やベッド)を確保しておく必要があります。また、マンションの場合は、管理組合への連絡や搬入経路の確認も忘れずに行いましょう。
海外から遺体搬送
海外で亡くなられた場合、または日本から海外へご遺体を搬送する場合は、国内の搬送とは比較にならないほど手続きが複雑になり、費用も高額になります。
海外搬送はなぜ複雑で高額になるのか?
海外との遺体搬送が困難を極める理由は、主に以下の点にあります。
法律・規制の違い:国ごとに遺体の取り扱いに関する法規制、衛生基準、輸出入のルールが全く異なります。
言語の壁:現地の警察、病院、行政機関とのやり取りは、当然現地の言語で行う必要があります。
必須となる処置:国際的な航空輸送では、公衆衛生上の観点から、ご遺体へのエンバーミング(防腐処置)がほぼ必須となります。
煩雑な書類手続き:日本の役所だけでなく、相手国の大使館・領事館での手続き、航空会社への申請など、膨大で専門的な書類作成が求められます。
海外搬送にかかる費用の内訳
海外からの遺体搬送費用は、ケースバイケースですが、総額で100万円~300万円、あるいはそれ以上になることも珍しくありません。国内搬送とは桁が違うことを覚悟しておく必要があります。
現地での諸費用
• 現地警察・病院での手続き費用
• 現地での死亡診断書(Death Certificate)発行費用
書類作成・手続き代行費用
• 日本大使館・領事館での証明書発行手数料
• 各種書類の翻訳料
• 業者への手続き代行手数料(20万円~50万円程度)
• 通関手続き費用:輸出入の際に必要な通関業者への支払い。
• 日本国内での搬送費用:到着空港から安置場所までの寝台車費用。
• エンバーミング費用:国や施設により異なりますが、10万円~30万円程度かかります
• 航空輸送用の特殊な棺の費用:密閉性や強度が求められるため、高価になります(15万円~50万円程度)
• 航空運賃(貨物):ご遺体と棺を合わせた重量で計算されます。アジア圏で30万円~、欧米では50万円~100万円以上かかることもあります
これらの費用は、国や地域、利用する業者によって大きく変動します。海外旅行保険に加入している場合、遺体搬送費用が補償の対象となることがありますので、必ず保険会社に確認してください。
海外搬送の複雑な手続きと流れ

海外からのご遺体搬送は、飛行機を利用するのが基本です。ここでは、海外で逝去され、日本へ搬送する場合の一般的な流れを解説します。
1. 現地警察・日本大使館(領事館)へ連絡
まず、現地の警察に届け出ると同時に、必ず最寄りの日本大使館または領事館に連絡します。ここで今後の手続きについて指示を仰ぎます。
2. 現地での死亡証明書(Death Certificate)取得
現地の法律に基づき、医師から死亡証明書を発行してもらいます。これがすべての手続きの基本となります。
3. エンバーミングの実施と証明書取得
現地の葬儀社などに依頼し、エンバーミング処置を行います。処置が完了すると「エンバーミング証明書」が発行されます。
4. 航空輸送用の棺に納棺
国際航空運送協会(IATA)の規定を満たした、頑丈で密閉性の高い棺にご遺体を納めます。
5. 大使館(領事館)での手続き
死亡証明書、エンバーミング証明書など必要書類を揃え、日本大使館(領事館)で「遺体証明書(埋葬許可証)」などを発行してもらいます。これが日本へご遺体を「輸出」するための許可証の役割を果たします。
6. 航空会社との調整・予約
ご遺体(貨物)を搭載できるフライトを予約します。受け入れ体制が整っている航空会社や便は限られています。
7. 日本到着後の輸入通関・検疫
日本の空港に到着後、貨物として「輸入」するための通関手続きと、検疫所での手続きが必要です。これらは専門の通関業者が代行するのが一般的です。
8. 国内の安置場所へ搬送
すべての手続きが完了したら、空港で待機している寝台車がご遺体を引き取り、ご指定の安置場所まで搬送します。
日本から海外へ搬送する場合も、相手国の規制や大使館での手続きが必要となり、同様に複雑な流れとなります。
海外搬送の依頼先はどこ?
これほど複雑な手続きを、ご遺族だけで行うことは現実的に不可能です。必ず専門家の力を借りましょう。
• 海外搬送に対応できる葬儀社・専門業者:国際的なネットワークを持ち、海外搬送のノウハウが豊富な業者があります。まずはインターネットで「遺体搬送 海外」などと検索し、実績のある業者に相談するのが第一歩です。
• 海外旅行保険の付帯サービス(アシスタンス会社):保険に加入している場合、提携しているアシスタンス会社が日本語で搬送手続きの大部分をサポートしてくれます。真っ先に保険会社へ連絡しましょう。
「遺骨」での搬送という選択肢
ご遺体のまま搬送するのではなく、現地で火葬し、遺骨の状態で日本へ持ち帰るという選択肢もあります。
メリット
• ご遺体の搬送に比べ、費用を大幅に抑えることができる(総額で数十万円程度に収まることも)
• 手続きが比較的シンプルになる
• ご遺族が客室に持ち込んで飛行機に搭乗できる(要航空会社確認)
デメリット
• 現地の法律や宗教上の理由で、火葬がすぐに行えない、または火葬文化がない場合がある
• 「故人の姿のまま日本へ連れて帰りたい」というご遺族の想いに沿えない
遺骨で持ち帰る場合も、現地の「火葬証明書」や「死亡証明書」、日本の在外公館で発行される書類などが必要となります。この方法も、海外搬送に対応できる葬儀社等に相談しながら進めるのが賢明です。
よくある質問
法律上、自家用車でご遺体を搬送すること自体は禁止されていません。しかし、「死亡診断書」の携帯が必須であること、ご遺体の衛生管理や尊厳の保持が極めて難しいことから、現実的ではありません。
寝台車の場合、運転席の隣に1~2名同乗できるスペースがあることが多いです。ただし、業者や車両のタイプ、長距離搬送で運転手が2名体制になる場合など、条件によって同乗できないこともあります。
国内の長距離搬送では必須ではありませんが、移動に24時間以上かかる場合や、ご遺体の状態を美しく保ちたい場合、ご遺族がゆっくりお別れをしたい場合には非常に有効です。一方、海外との搬送では、国際的なルールとしてほぼ必須となります。
ほとんどの葬儀社や搬送専門業者は24時間365日体制で対応しています。深夜・早朝料金が加算されることはありますが、時間を問わず、まずはお電話で相談してください。
まとめ
大切な方を遠方で亡くされた時、ご遺族は深い悲しみの中で、複雑で慣れない手続きに直面します。県外への長距離搬送、そして国境を越える海外への搬送は、時間も費用も、そして精神的な負担も大きいものです。
しかし、どのような状況であっても、故人様を安らかに、そして尊厳をもってお送りする方法は必ずあります。そのためには、ご遺族だけで抱え込まず、専門的な知識と経験を持つプロフェッショナルの力を借りることが不可欠です。
この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、正しい知識を得るための一助となれたなら幸いです。いざという時に慌てないためにも、信頼できる葬儀社や専門業者を事前に調べておくことも大切です。故人様との最後の時間を大切に過ごせるよう、心からお祈り申し上げます。